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林内作業車(フォワーダ)の自動走行
パシフィックコンサルタンツ株式会社 様との共同研究
林業における従事者数の減少や従事者の高齢化による人手不足の問題は年々深刻になってきています.例えば,林業における作業では特殊な機器や車両などの操作や運転が必要となりますが,資格や免許を有した技術者の不足などが課題となっています.当研究室では,これらの問題解決のために,本研究室ではフォワーダなど林内作業車の自動運転に取り組んでいます.
森林環境における自己位置推定
林業における自動化の需要の高い作業の一つに作業車両の自動走行があります.例えば,伐採した樹木を運搬するフォワーダなどの運転を自動化することは,現場における人手不足を解消し,同時に危険な現場作業から人を守ることにも貢献します.自動走行では自己位置と目的地までの経路情報や環境中の障害物との相対距離の獲得が重要となりますが,特に林道においては走路の脇には樹木の生い茂る斜面や切り立った崖などが存在するため,安全な走行のためには林道内での正確な自己位置推定が必要となります.
林道における自動走行の課題として,GNSSが利用困難であることや,タイヤの回転数の情報によるデッドレコニングが困難であることが挙げられます.林道では人工衛星からの電波が遮られGNSSの精度が悪くなり,傾斜や不整地が多いため車輪の空転などが起こりやすく,一般車道での自己位置推定手法をそのまま適用することは困難です.当研究室では,林道という制約の中でも自己位置推定が可能で,自動走行に必要なリアルタイム性と精度を両立したシステムの構築を目的として研究を進めています.
森林環境における自己位置推定の関連論文
- 富田 健斗, 鈴木 理也, 新貝 文昭, 櫻井 恭介, 南 智好, 藤井 浩光: “森林作業道における自動走行のためのスキャンマッチングの信頼度を考慮した自己位置補正”, 第29回ロボティクスシンポジア講演予稿集, 3B2, 沖縄, March 2024.
- 富田 健斗, 鈴木 理也, 岩澤 尚樹, 新貝 文昭, 櫻井 恭介, 南 智好, 藤井 浩光: “林内作業車の自動走行に向けた森林環境におけるスキャンマッチングによる自己位置推定の破綻判定”, 日本ロボット学会誌, 2024. (Accepted)
- 富田 健斗, 鈴木 理也, 岩澤 尚樹, 新貝 文昭, 櫻井 恭介, 南 智好, 藤井 浩光: “林内作業車の自動走行に向けた森林環境におけるスキャンマッチングによる自己位置推定の破綻判定”, 第41回日本ロボット学会学術講演会(RSJ2023), 2G3-03, 仙台, Sep. 2023.
- 富田 健斗, 藤井 浩光, 鈴木 理也, 新貝 文昭, 櫻井 恭介, 南 智好: “林内作業車の自動走行のためのLiDARデータを用いた人工ランドマーク認識とスキャンマッチングによる自己位置推定”, 第28回ロボティクスシンポジア講演予稿集, 3C3, 和歌山, March 2023.
- 富田 健斗, 畠山 佑太, 藤井 浩光, 斉藤 泰久, 新貝 文昭, 櫻井恭介: “林業における自動走行のための反射強度を用いたスキャンマッチングによる自己位置推定”, 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会’22講演論文集(ROBOMECH2022), 札幌, June 2022.
- 富田 健斗, 畠山 佑太, 藤井 浩光: “林業における自動走行のための大域点群とLiDARデータのスキャンマッチングによる自己位置推定”, 第39回日本ロボット学会学術講演会(RSJ2021), 1G2-03, Sep 2021.
森林環境における走路検出の関連論文
- 岩澤 尚樹, 富田 健斗, 鈴木 理也, 新貝 文昭, 櫻井 恭介, 南 智好, 藤井 浩光: “森林作業道における走行時の滑落防止のための複数 LiDAR を用いた走路検出”, 第24回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会(SI2023), 2B3-06, 新潟, December 2023.
受光伐による日照条件の変化予測
パシフィックコンサルタンツ株式会社 様との共同研究
森林が担う多面的機能には,生物多様性の保全,土砂災害の防止,水源の涵養や保健休養の場としての役割があります.そのような森林の多面的機能が発揮されるためには,下層植生を豊かにすることが必要となります.このような下層植生を育成させるには森林内の光環境の確保が必要となり,林業では森林内の光環境の調整を行う目的で受光伐を行います.受光伐は,上層樹木を切り抜きし下層の樹木の成長環境と光環境を確保することを目的とした樹木伐採です.本研究室では,受光伐における対象樹木の選定において,伐採による森林内の光環境の変化を事前に定量的に評価可能な手法の研究開発に取り組んでいます.
樹木の3次元計測に基づく日照シミュレータの構築
従来は,受光伐の際に対象とする森林の現在の照度を知るために,事前の調査として照度計や魚眼レンズを用いた森林内外の照度計測が行われ,取得した森林内の照度情報から受光伐を行う範囲を決定してきました.しかし,これらの方法では多大な労力が費やされることが課題となっています.また,伐採する樹木の選定においては,その判断は担当者の経験や勘に委ねられており,判断ミスによる植生の損失などによる問題も生じています.
本研究では,受光伐の効率化のための日照シミュレータの構築を目的としています.特に現場で生育する実際の複数本の樹木を対象とした評価を行うために,LiDAR により実測して得た点群データを用いて対象とする現場を3次元モデル化し,3次元のCG空間上で実際の太陽の運行をシミュレーションすることで,複数の樹木が落とす影の変化を獲得します.
関連論文
- 鈴木 理也, 富田 健斗, 新貝 文昭, 櫻井 恭介, 南 智好, 藤井 浩光: “受光伐による日射量変化予測のための樹木の 3 次元計測に基づく林内照度を考慮した日照シミュレーション”, 第24回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会(SI2023), 1H6-13, 新潟, December 2023.
- 鈴木 理也, 富田 健斗, 新貝 文昭, 櫻井 恭介, 南 智好, 藤井 浩光: “受光伐における作業支援のための樹木の3次元モデルを用いた日照量変化シミュレーションに基づく選木アルゴリズム”, 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会’23講演論文集(ROBOMECH2023), 2P2-D14, 名古屋, June 2023.
- 鈴木 理也, 富田 健斗, 新貝 文昭, 櫻井 恭介, 南 智好, 藤井 浩光: “受光伐による日照条件の変化予測のための樹木の3次元モデルを用いた日照シミュレーション”, 第40回日本ロボット学会学術講演会(RSJ2022), 2H3-07, 東京, Sep. 2022.