研究室配属を検討中の皆さんへ

当研究室で学べること

当研究室は「ロボットビジョン」の研究室です.ロボットビジョンを明確に定義することは困難ですが,当研究室では「人間の視覚を用いた認識能力を代替する機能,または凌駕する機能をロボット上で実現するための技術」を目指して研究に取り組んでいます.我々は主に眼から入力される視覚情報を頼りに活動を行っていますが,人間の認識能力全体に注目した場合,果たして視覚のみを用いているでしょうか?眼から入力される光の強度や色などの映像情報と同時に受け取る,音などの聴覚情報や肌触りや手触り,反力などの触覚情報もあわせて,我々は対象を認識しているはずです.当研究室では,人間の認識能力を様々なセンシングの結果を合わせた統合的な情報処理能力と捉え,それを異種複数のセンサを用いてロボット上で代替しようと取り組んでいます.したがって,「ビジョン」を冠した分野の研究室ではありますが,用いるセンサは人間の目に相当するカメラに限らず,様々なセンシングデバイスを用いた研究をします.目的に応じて合理的な構成でシステムを構成し,ロボットによる作業の自動化や高度化を目指します.

分野としては,主に以下の分野の知識・技術を研究・活用します.

コンピュータビジョン
映像など2次元情報からの3次元再構築
画像・点群処理
映像情報や3次元点群情報の加工・生成
機械学習
人の学習・認識能力を計算機上で再現
センサ信号処理
センサ信号の統計的処理・異種複数センサの信号の統合

上記の専門分野に関する知識や技術とともに,当研究室で重視している基礎的な項目の1つが「論理的な思考能力と表現能力」です.物事を筋道立てて考え,それを他者に的確に伝えて説得をする.ビジネスの現場でも「MECE」や「5W1H」などと呼ばれる論理的思考のフレームワークとして導入されているものを含みます.これらは研究を進める上ではもちろんですが,皆さんが将来的に社会で活躍する上では欠かせない素養となります.当研究室では,研究活動を通じて論理的な思考のトレーニングを行い,日々のゼミでの進捗報告や学会のための発表練習などを通じてプレゼンテーションの訓練を行います.また,論文の執筆などを通じて理系の文章術のトレーニングを行います.

自学自習を心がけましょう

まず,当研究室では「研究活動は授業ではない」ということを理解してもらうことから始めます.確かに,研究室でのゼミなどを通じた活動は講義の一環として単位が用意されています.そのため「教員から与えられた課題をこなしていけば単位が取得でき,卒業できるだろう」という誤解に陥りがちです.しかし,研究として取り組む課題には答えは用意されていません.教員もその課題をどのように解くのが正解かの答えを知りません.

もちろん,教員は自身の知識と経験から学生の皆さんに技術的な指導はします.しかし,教員が行うのは,あくまで研究の進め方・方向性の示唆までです.教員が直接的に手を動かし,プログラミングや実験をしてしまったら,それは教員の研究です.研究を進めていくのは皆さん自身であり,自らが主体的に動かない限り一切の進展は得られません.そして,研究を進めるにあたって必要な様々な知識や技術を皆さんが使いこなせるようになるには,自分自身で情報を収集し主体的に学んでいく必要があります.結局のところ研究をする上では,常に自学自習が求められます.研究室への配属を希望する学生の皆さんには,以上の点を理解した上で,当事者意識をもって研究テーマに取り組んでもらうことを期待します.

研究室は,皆さんの研究活動を支援・推進する共同体です.研究室には,研究遂行に必要なソフトウェアや機材が揃っています.そして何よりも同分野の研究テーマに取り組んできた教員や,今まさに取り組んでいる先輩がいて,専門的な知識が蓄積されており,皆さんが突き当たる問題やトラブルに対して的確な支援を得られる環境です.同じ分野を志す者同士が協同して研究を遂行できる集団,それこそが研究室の意義です.研究に必要な機材や現場,そして学生の皆さんが協力して切磋琢磨できる環境づくりには力は惜しみません.皆さんが自身と周囲のために良いと思う提案はいつでも歓迎していますので,ぜひ一緒に研究室を発展させていきましょう.

研究テーマの選び方

卒業研究に取り組むにあたって「そもそも研究とは何か?」,それが皆さんがまず直面する疑問だと思います.教員自身も胸を張って説明できるような明解な答えは用意できていませんが,少なくとも研究活動では,皆さんがこれまで取り組んできた講義でのレポート課題のような答えは用意されていません.世の中には数多くの取り組むべき課題が存在します.それらの中から自分自身の興味・関心に適合する課題を見出し,その解決のために様々な試行錯誤を繰り返す,当研究室ではその過程を研究と考えます.

世の中に残された課題は,解決の需要は確かにあるのだけど,具体的に何をどうしたら解決できるのかわからないような,漠として形を成していない場合がほとんどです.まずは,それらの課題に解くべき問題としての形を与えることから始める必要があります.そのためには,まず問題を整理・分析し,工学的に取り組むことが可能な形まで具体化・定式化します.そして次に,自身でモデル化した課題を解く必要があります.課題に対する解法を考案し,その有効性を検証した上で提案手法としてまとめます.

研究テーマを設定し検討を進める上で,いくつか注意すべき点があります.研究テーマを設定したからには,その課題を解く必要性を主張できないといけません.何を当然のことを,と思うかもしれませんが,自分でも気づかないうちに課題を解くために課題を設定していることがまま起こり得ます.研究テーマを設定する上では,以下の項目を満たしているかのチェックが必要です.

社会的なニーズ
この研究成果は何の役に立つのか?需要はあるのか?
テーマの新規性
十分に先行研究の調査はできているか?既に解決済みの問題ではないか?
問題設定の妥当性
社会的なニーズと設定した課題は合致しているか?あまりにも特殊な不自然な問題設定になっていないか?より本質的な問題を見逃していないか?
モデルの整合性
モデル化は適切か?設定した問題を解くことと,そもそもの課題の解決に乖離はないか?あまりにも特殊な不自然な問題設定になっていないか?
アプローチの合理性
問題を難しく考えすぎていないか?既存の簡易な方法で簡単に解決してしまうのではないか?

これらは研究テーマを設定する上で,熟練した研究者でもしばしば陥りやすい罠です.テーマが独りよがりになっていないか,常に注意を払う必要があります.

もちろん初めのうちは,自分一人で研究テーマを設定することを困難に感じるかと思います.そのような時こそ,研究室の中で教員や先輩・同期ととことん議論し,試行錯誤を繰り返し,その結果に指摘を受けることをお奨めします.議論を深めていくうちに,初めはぼやけていた自身の興味や関心が明確化し,課題の輪郭がはっきりとしてくるでしょう.そうすると,卒業研究をまとめるころに,ようやく自分が取り組んでいる研究テーマの意義が理解できるようになっているかと思います.

学会で発表しましょう

学生の皆さんには,対外的な発表をすることを推奨しています.研究室での活動では,専門的な知識を獲得し様々な技術を磨くことができますが,たかだか数十人の閉じた環境にいると,思考までも閉鎖的になり視野を狭めてしまう危険性があります.何らかの形になった研究成果は公の場で発表し,同じ研究分野の諸先生・先輩研究者の方々にご指摘やアドバイスを頂いたり,逆に様々な分野の人に広く意見を求めたりすることを強くお奨めします.そのような機会として,学会は最適の場です.

未来ロボティクス学科でも,3年次には2回のポスター発表と,4年次には卒業研究の中間発表の機会があり,他研究室の先生方や先輩方に自身の研究テーマを説明し,意見をもらえる機会があります.しかし,やはり学科内もある意味では同じ文化を共有する閉じた環境であり,その中で頂けるご意見ご指摘は限定された偏ったものになる可能性があります.

以上の観点から,当研究室では在学中に最低一回の学会発表を推奨しており,発表のための参加費や旅費などについて支援をしています.

研究テーマについて

当研究室での夏学期のスケジュールは以下の通りです.

4月~7月:プレ課題を通じた学習
8月~:卒業研究テーマ決め・研究遂行

配属後の3か月間は基礎的なトレーニング期間と位置付けています.新メンバーとは面談の上で,興味の方向性を探り,卒業研究テーマに繋がりそうな基礎的な(ある程度,解決の道筋が見えている)課題をいくつか設定します.その課題を学生自身が選択し,自身で具体化・アレンジし,解決までを行います.研究の一連のプロセスを疑似的に経験することで,自学自習の習慣を身に付けるとともに研究遂行に必要な基礎的な技術を習得を目指します.

過去のプレ研究課題

以下に,研究室のB3が配属後の3か月で取り組んだ「プレ研究課題」の例とその成果発表のポスターを掲載します.
このポスターは,B3前期の講義「ロボット設計製作論実習4」の一環として7月上旬に発表しているものです.

FAQ

研究に関して

画像処理・コンピュータビジョンを勉強したことがありませんが大丈夫でしょうか?

研究テーマに興味があれば当該分野の事前知識がなくても特に問題はありません.これからの2年間でこの分野を自学自習していくための学習意欲が最も重要です.

研究テーマの持ち込みは可能ですか?

研究テーマの持ち込みは大歓迎ですが,自主的に研究をハンドリングしていくための行動力と,目的を達成する責任感を期待します.持ち込んでもらったアイディアを基に,指導教員と相談の上,目的と技術的な新規性を明確にしたうえで正式に研究テーマ化します.

複数人で同じテーマに取り組めますか?

当研究室での卒業研究テーマは1人1テーマを原則としています.研究室には「複数の共同研究やプロジェクト」が存在し,同じプロジェクトに複数人がアサインされている場合もありますが,独立した異なるテーマを設定して取り組んでもらっています.もちろん,共通する要素技術などもありますので,先輩後輩間や同級生同士で知見やツールを共有し,協力し合って質の高い研究成果を上げてもらえるように配慮はしています.不安に思う必要はありません.

学会で発表したいのですが,学会参加に対する補助などはありますか?

上記の説明の通り,当研究室では学会での発表を推奨しています.研究室の学生の皆さんが積極的に学会に参加できるように,学会発表に必要な参加費や旅費(交通費・宿泊費)などに関して支援をしています.詳細はお問い合わせください.

研究室生活に関して

コアタイム(研究室にいなければならない曜日や時間帯)はありますか?

コアタイムはありませんが,規則正しい生活をし,研究を効率的に進めるために,毎日研究室に通うことを強く推奨しています.なお,当研究室では週2回程度のゼミ(平日に開催)への参加は原則必須としています.

研究室に私物の持ち込みは可能ですか?

私物の持ち込みに関しては特に制限はありません.息抜き程度の漫画やゲームや楽器などの持ち込み・使用も特に規制はしていません.

ただし,常識の範囲での行動を期待します.社会的・大学的に使用が禁止されているものはもちろん持ち込んではいけません.また,それの持ち込みによって研究室のメンバーに不快感を与えるもの,ハラスメントに相当するものの持ち込みは厳禁としています.

研究室にはどんなイベントがありますか?

研究室では学術的なイベントの他にも学期の節目の打ち上げ会などが行われています.大まかなスケジュールは以下をご参照ください.

その他にも学会投稿後のお疲れ様会なども節目ごとに行われており,発表者特権ではありますが国内外への泊りがけでの学会出張も大きな楽しみです.今後もメンバー主体で様々な楽しいイベントが企画されることを期待しています.

研究室に3年生のロッカーや机はありますか?

当研究室では,B3用の共用棚・ロッカーなどがありますので,私物などを置いて講義に出るなど研究室を拠点とした活動が可能です.残念ながら敷地的な問題で全員には机はありませんが,B3が優先的に使える大机が2卓あり,メンバー全員分の椅子は用意しています.また,3年生であっても教員が研究遂行に必要と判断した場合は机を割り当てています

その他

大学院の進学に興味があります.大学院へは進学したほうが良いですか?

当研究室では,卒業研究を通して論理的な思考とそのアウトプットの仕方の方法論を習得することを第一の目標としています.学び方や考え方,表現方法の基礎を築くことで,ようやく自分自身で研究の方向性を考えられるようになり,できることも増えるようになります.しかし,就職活動の期間を考えると研究室配属から学士取得までの2年間は驚くほど短く,必ずしも十分なトレーニングを積めるとは限りません.

その観点から当研究室では,大学院進学を希望する学生を歓迎・優遇しています.

指導教員の情報はありますか?

教員の詳細については以下のページなどをご参照ください.